前までは、日本のいたるところに茅葺き屋根(かやぶきやね)の民家を見ることができました。
しかし戦争が終わり高度経済成長をとげると身近にあった素材での家ではなく新建材による家づくりにとってかわっていきます。
その最中建築基準法の改正が行われ、社寺仏閣などの文化財を除いては茅葺き屋根の家を新築することは困難な時代になってきました。
茅葺きはその地域に生えていた植物を使い、地域の人たちが協力して屋根を葺くという
農村社会の生業でした。村落共同体の互助組織である「結い」がその代表です。
しかし農村部の生活様式の変化や、里山と田んぼの広がる田舎にハウスメーカーの家が
建つことで、職人たちの腕をふるう機会が少なくなっていきました。
そのうちに職人たちは歳をとり後継者を育てる機会もままならず、その数は年々減っていきました。

その一方で茅葺き屋根の居住者は、古くからのつきあいのある職人しかしらないこともままあり
今までつきあってきた職人がいなくなってしまうと次は誰に葺き替えをお願いしたらよいか
分からなくってしまいました。その道しるべもなく途方に暮れ
結局は茅を屋根から下ろしてしまうこともあるようです。

また葺く材料である茅の調達の問題があります。
第一に北上川河口に生えるヨシを例に挙げると、ヨシは人の手を借りなくては
屋根の材料が入手できません。毎年刈り取り、火入れをし、まっすぐ伸びろまっすぐ
伸びろと気持ちを込めて手を入れなければ、春に出てきた新芽に去年のヨシが倒れかかり
それが腐り、生育の邪魔をしてしまいます。生育の悪い曲がったヨシは製品としては使えません。
第二に茅の生える場所が減ってきたことも茅葺き屋根の民家が
減ってきている原因でょう。川は言わずと知れた三面護岸で固められ
まっすぐに流れてしまいます。山は宅地開発等で切り開かれ、ふるさとと
呼べる場所は日本には少なくなってきました。
しかしそんな中、次に葺き替えるときに茅が調達できなくて困ると思った
居住者が、自分で休みの日を利用し家の周りには少なくなったからといい
遠くまで車を出して茅を探し、自分たちで刈り取ってきて保管している方も
いらっしゃるようです。ある民家調査で出会った方ですが
地道に自分の家を守ろうとしている姿に心打たれました。

屋根を修理したり葺き替えたりすることは、金銭的にも容易なことでは
ないことはみなさんもご存知でしょう。
それ以上に茅葺屋根を通して、今の社会では忘れがちな人と人のつながり
人と自然とのつながりを伝え残していく事が必要なのではないかと考えています。