茅葺きの技術は、長い年月をかけ、たゆまぬ努力によって得られるものです。
全国で茅葺き職人の高齢化が進む中、私たちは若手の育成に取り組んできました。
1993(平成5)年の法人化により働く環境が整い、
地元だけでなく全国から若者が職人を目指すようになりました。
若者たちは、熟練した職人たちと日々ともに現場で働くことで技術を向上させ、一人前になっていきます。
ベテランの腕と若い息吹が、私たちの信用を支える両輪となっているのです。
10年ほど前から、外国からの人材も大きな戦力となっています。
フィリピンから来日した職人を皮切りに、
現在はモンゴルやウガンダからやってきた職人が技術を身につけ、活躍の場を広げています。
職人のグローバル化は、茅葺きの未来を照らす灯火となることでしょう。
また、茅葺きの技術は、
伝統的な建物のためだけに守っていくものではありません。、
ヨーロッパでは、環境に対する意識が高く、
デザイン性にも優れていることから、茅葺きが高く評価されています。
高級リゾート地として知られているドイツのジルト島では、、
別荘や高級レストランのほか、エルメスやルイ・ヴィトン、ブルガリなど、
名だたるブランドの店舗も皆、茅葺き屋根の建物です。
オランダでは、ゴルフ場のクラブハウスや、
巨大テーマパークのエントランスの建物などにも広く採用され、
富裕層を中心に茅葺きの住宅が新築されています。
茅葺は屋根だけではありません。
世界遺産として有名なオランダ・キンデルダイクの風車は、外壁が茅で葺かれているのです。
茅壁の技術も現代的な建築に応用され、高級住宅や店舗のほか、
役所や消防署などの公共施設で目にすることができます。
私たちは、こうした世界の動きを敏感にとらえてきました。
本社倉庫には茅壁を取り入れ、
日本の茅葺に対する従来のイメージを覆すような現代的な外観に仕上げました。
これから民家や店舗などにも、茅壁のモダンな建築が増えていくことでしょう。
人が住むような大きな建物だけでなく、小屋や犬小屋、あずまやなど、小さな茅葺きにも人気が集まっています。
私たちは柔軟な発想で、現代日本の暮らしに適応した茅葺きのあり方を模索していきます。
新しい建築の流れは、スレート葺きにも及んでいます。
私たちは震災後に建てられた復興住宅をはじめ、
釜谷崎倉庫や新事務所の壁面などにも天然スレートを採用してきました。
天然スレートの屋根材は、東京駅丸の内駅舎の保存復原工事を通じてより広く知られるようになり、
近年、都内の個人住宅や関東圏の施設などでは、
現代建築の屋根材として選ばれるようになってきました。